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モルヒネ切らさないでね

 このところ兄は、急速に容態が変化するようになってきた。一時間前少し良い状態だと安心していると、次の瞬間、酸素飽和がぐんと落ちたりする。

 それは塩酸モルヒネの点滴が切れてしまった時に起こる。主治医が回診してくれ、もう苦しくないようにしますからね、と言ってくれた。

 藁をもすがる思いで、お願いしますとだけしか言えない。病院へは朝私が行き、お昼過ぎて奥さんが行き、夕方から娘が行くことにしている。

 休日には息子も病院で、甲斐甲斐しく父の面倒を見ている。こんなに頻繁に来る家族も少ない。重篤な患者でも、家族の姿を見たことがない人も結構いる。

 先日もいつものように朝病院に行くと、兄はベットに座して着替えをしているのだった。点滴の管があるから、一人では着替えられない。半分裸で苦しそうにしていた。

 ポータブルトイレに移ろうとして、失敗したらしく、床が濡れていた。看護師を呼び着替えを手伝ってもらった。兄はもう導尿した方がいいのではと言うと、先生に相談しますと答えた。

 昼過ぎ息子が病院を訪ねると、苦しくて失禁しそうになっていた。トイレに立つのももう出来なくなってきたのに、看護師は何もしない。

 失禁しそうになり、慌てて導尿を始めた。家族が言われなければ判断できないのだろうか。毎日診ている患者の日々の様子を、どうして把握できないのだろう。

 そんな病院だから、こちらから度々出向いて、入院の様子を見に行かなければならない。これで完全看護と言えるのか。

 導尿をして欲しい、苦しいからモルヒネを投与してください、痰を取ってください、いちいち言わなければならない。

 ある看護師は、痰の吸引をお願いすると、「本人が言ったんですか?」と嫌な言い方をする。本人が喉を差して苦しそうにする時は、口の動きだけで解る。

 もちろん本人がやって欲しいと行ってます。私はムッとした。その看護師が兄の係りの日、家族の人全員に来てくださいと連絡があった。

 兄の容態が急変したのだと言う。モルヒネを点滴し、少し持ち直した。看護師は、医師が言ったのにも関わらず、モルヒネの投与をしてくれない。

 酸素が入らなく苦しみ身もだえしているのに、もう少し様子を見ましょうと言う。酸素飽和が70代になり(普通97から98位はある)ようやくモルヒネを持ってくる。

 様子を見ましょうと言ってから、僅か10分ばかりであった。10分苦しい人の様子を見てどうするのだ。点滴が終わったら、休むことなく入れ続けなければならない。

 気管支は普通、10ミリほどもある管であるが、兄はその酸素の通る管が、米粒ほどあるかなしの気道しか開いていない。

 奥さんが「先生も苦しくないようにしますと言ったでしょう。モルヒネを切らさないようにお願いします」と看護師に訴えると、2人の看護師は口も利かず知らん顔をしている。

 看護師によっては、家族と本人の希望を良くきき、モルヒネを切らさず投与してくれる人がいる。若く優しい看護師さんである。

 病院から帰る時間になると、まず頼むのは、モルヒネを切らさないでと言うこと。来る日も来る日も、看護師さんにお願いしている。 

 今日も午後八時、病院から帰る時に忘れずに言ったのだった。モルヒネ切らさないでね。夜勤の看護師さんが、どうか優しい人でありますように......
by inakagurashi2003 | 2007-12-23 21:01 | 雑談

初孫誕生で喜びのオーマ(ドイツ語でおばあちゃん)です。


by inakagurashi2003